オトナだから愛せない
「なんだよお前、あいつがちょっとかっこいいからって、助けてもらって惚れでもしたか?」
「え、なに言ってるの皐月くん……?」
「しかも、そんな格好して」
「え、これ似合ってない?さっきの人には褒めてもらったんだけど……」
「はぁ、本当ムカつく。来させなければよかった」
皐月くんのその言葉に私が会社の人と接触してしまったからだと思った。卒業するまで秘密という約束を破ってしまったから。こんな格好したところで、私はまだ子供だ。大人の真似事に過ぎないのに。
「皐月くん、ごめんなさい。こんな格好で来ても子供の私は皐月くんには似合わないよね。会社の人にも会っちゃってごめんなさい……」
「は?なんでそうなる?」
「だって、皐月くんそれで怒ってるんでしょ」
「バカ」
「……」
「……」
「バカだもん!皐月くんに綺麗だって言ってもらいたくて、ちょっとでも大人っぽく見られたくて、皐月くんの隣にいても恥ずかしくない女の子って思われたくて……」
そこまで言って「はぁー」と、皐月くんの大きなため息が聞こえてきた。「とりあえず、行くぞ」と言われ指を絡められそのまま引かれる。
こんなところで手なんか繋いで大丈夫なのかと、私の方が心配になってキョロキョロしてしまう。キョロキョロしたところでどの人が皐月くんの知ってる人かも分からないのに。
「お前本当にバカだろ」
「なにさ、またバカ、バカって。どうせ私はバカですよ」
「バカ、自分が綺麗だってもっと自覚しろよ。俺以外の男に綺麗だって言われて喜んでんなよ。そんなの俺だけが知ってればいいんだよ」
拗ねてみれば、皐月くんから返ってきた言葉は予想していたものとは違くて。