オトナだから愛せない
私の家の扉に背中を預け「遅い」とまたもや文句を口にする彼は、いったいそこでなにをしているのでしょうか?
「なんで?って、俺の家だし」
「それはそう、だけど、でも」
「……」
「そこは、私の家の前で、」
皐月くんの方へ歩みを進める。なにをしているのか考えてみるけれど私のポンコツな脳みその引き出しに答えは入っていないようで。
「インターフォン鳴らしてもお前が出てこないから」
「もしかして、私のこと待ってたの……?」
「うるさい」
「……うるさいって……」
「こんな時間なのにお前が出てこないのが悪い」
「いやまだ、18時前だし。なにか急ぎの用事だったら連絡くれれば家隣なんだから私が皐月くんの家まで行くよ。だからここで待たなくても……」
もしかして、朝送ったメッセージについて説教をするために待っていたとか……?でも、頭のいい皐月くんがそんな要領の悪いことをするとは考えにくい。
出来の悪い頭で、ぐるぐる考えてみても彼の考えなんてさっぱりだ。
結局なにも分からないまま、私は皐月くんの目の前まで到着してしまった。
恐る恐る私より頭ひとつ分背の高い皐月くんを見上げればぐっと顔を覗き込まれた。
綺麗なお顔が目の前に迫ってきて、どきりと胸が鳴った。なんだか近いよ皐月くん。
どうしてしまったのですか?怒りがマックスに到達してしまったのですか?
いつもは私がベタベタすると怒るというのに。もはやこれは怒り大爆発の前触れ?
これ以上怒らせたら私は本当に皐月くんに嫌われてしまう。そう思った。