桜 夢 (オウム)
あごをしゃくって開け放した窓を指す。

街灯なんて存在しないこの村の夜は、まさに墨で塗りつぶしたようだ。ところどころぽつんぽつんと、生活の灯がたよりなく燈っているのが見える。そして闇に慣れてきた目をもっと凝らすと、四角く切り取られた風景のちょうど真ん中に、あの桜の木がどっしりと立っているのが見えた。

「ああ、ここからでも見えるんですね、あの桜」

「そうじゃないですよ。その話はもうさっきしたでしょ。それじゃなくて、ほら、その上」

指を差す。

桜の木のもっと奥の位置に小高い山があり、その上に建っている人家らしき影が見えた。

どうやらかなり大きな屋敷のようだ。

いくつかの窓から漏れる光が小さくゆらゆらとゆれて見える。

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