桜 夢 (オウム)
「それはそうと、この村、ちょっとおかしくありません」

「…なにがです」

「あなたは来てすぐだからまだわかんないかな。なにかね、村の人達がね」

「はあ」

「なにか、おかしいんですよ」

全然わからない。

「んー、どう言ったらわかってもらえるかなー。なんかこう、閉鎖的ちゅうか。いや、排他的っちゅうんですかね。あれ、同じ意味ですか?どうもうまく言えないな。なんだろう、よそ者を― 我々のことですがね、なんか、寄せ付けないと言うか、はやく出ていって欲しいと思っているような感じがするんですよ」

「そうですか。ここの主人なんか、愛想いいと思いますけどね」

「いやあ、ありゃうわべだけですよ。目を見てみなさい、目を」

「ふーん、私は着いたばかりなんでまだわかりませんね。でも、田舎ってそんなところがあるのかもしれませんね。そんなに感じますか」

「で、あの桜ですよ」

無視かよっ。

「あの桜、あなたも見たでしょ。これは私の仮説なんですがね…」

そう言うと信山はぐいと私に顔を寄せ、低い声で言った。

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