Violet Detective
東さんが私の左目を見つめる。私は左目に眼帯をしている。怪我をしたわけではない。目の色を誤魔化すためだ。

「大丈夫です」

私はそう言って地面に置いていた荷物を手にする。東さんが「持つよ?」と言ってくれたが、丁寧に断った。

「あっ、そうそう!僕の髪の色なんだけどさ、これって染めてると思うでしょ?」

研究所の廊下を歩きながら、東さんが無邪気に笑いかけてくる。この人は、まだ成人していない私より子供っぽい。

「これ、地毛なんだよね。生まれつき赤いんだ」

地毛?赤毛が地毛?

私の頭の中に、幼い頃に読んだ「赤毛のアン」が思い浮かぶ。アンは生まれつき赤毛だった。でもそれは外国の話だからだ。

「東さんはハーフやクォーターなんですか?」

私の問いに、東さんは「う〜ん…。難しい質問だなぁ。まあ不正解ってわけじゃないんだけど…」と言う。

研究所の中には、実験で使うのであろう道具がたくさん置かれている。家で見たことがあるものもあれば、ないものもある。
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