無敵の総長は地味子ちゃんに甘すぎる
「えと...じゃあ、私はこれで」
ささっと荷物をまとめて、ペコリと一礼。
そうして、一歩踏み出した瞬間。
ドアの段差に躓き、身体が大きく前に傾いた。
こ、転ぶ......っ!
咄嗟に目を瞑るけど、いつになっても痛みは襲ってこない。
感じるのは、腕に回るあたたかい温もりだけ。
あ、れ....?
おそるおそる目を開けると、ドクン、って心臓が脈打つ。
桜雅くんに抱きしめられるような体勢で、身体を預けていたのだ。
「....地味なだけじゃなくて、ドジなの?おまえ」
低い声で囁かれて、クスッと笑われる。
や、やってしまった.....っ。
「....ありがとう、ございます....っ。しっ、失礼しますっ」
少し目を逸らしてお礼を言うと、サッと腕を解いて、私は屋上を飛び出した。