晴れ所により雷雨、所により告白【続編完結】
「ふふっ
 晶の顔!
 ものすごく真っ赤だよ。
 かわいい〜!
 ね? 速水課長?」

うそ!?

どうしよう!?

顔を隠したくても、片方の手を課長に握られてるし、もう、逃げ場がないよ。

「だろ?
 俺もそう思う。」

は!?

まさか、課長がそんなことを言うとは思ってなくて、驚いた私が顔を上げると、そこには、はにかんだように微笑む課長がいて、思わず、

かわいい…

と思ってしまった。


課長は、ずるい。

普段は、あんなにしっかりしててかっこよくて大人の男性なのに、時々、すっごくかわいくなるなんて、私の中のキュンキュンが止まらなくなるじゃない。

このままだと、私の心臓がもたないかも。

私は、課長がコーヒーを飲み終えるとすぐに、

「じゃあ、私たち、お先に失礼するね。
 雪菜、体、無理しないで、大事に
 するんだよ。」

と言いおいて、先に店を出た。


はぁぁぁ…

店を出るなり、私は大きく息を吐く。

「ん? 晶、どうした?」

私は課長を見上げて睨もうとしたけど、その優しい眼差しに毒気を抜かれてしまった。

「もういいです!」

私が駅に向かって一歩踏み出すと、課長に手を掴まれた。

振り返った私に課長は、

「今さらだけど、晶って呼んでいい?」

と心配そうに尋ねる。

もう!
だから、どうして、かっこいいとかわいいを交互に出すかなぁ!
ほんと、ずるい。

「ダメって言ったら、呼ばないんですか?」

私が意地悪を言うと、

「うーん、ダメなら違う呼び方を考えるよ。
 晶ちゃん? あきちゃん? アキでも
 いいかなぁ。」

と真剣に考え始める。

ふふっ
ほんとにもう…

「いいです。
 晶って呼んでください。」

私が言うと、課長は嬉しそうに微笑んだ。

「よかった。
 じゃあ、晶、帰ろ?」

課長は、7月の暑い盛りだというのに、ずっと私の手を握ったまま、家まで送ってくれた。




それにしても、今日はすごい日だったな。

あんなありえないメンバーでの食事の後なのに、今、幸せな気分でいられるのは、きっと課長のおかげ。

あの日、雷雨の中、課長に傘を貸してよかった。
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