晴れ所により雷雨、所により告白【続編完結】
「龍?」

私にとって、うずくまる智也より、目の前に立っている龍の方が心配だった。

振り返った龍は、私を見て声を掛ける。

「晶、大丈夫?
 けがはない?」

「うん。
 龍は?」

私が心配すると、龍は笑って言った。

「俺は大丈夫。
 でも、鞄は買い替えだな。」

見ると、智也を殴りつけたブリーフケースには、ナイフが刺さったままになっている。

ほっとした私は、その場にへたり込んでしまった。



 その場にいた誰かが通報してくれたようで、程なく、警官が自転車でやってきた。

駅前交番から来てくれたんだろう。

智也はその場で手錠をかけられ、現行犯逮捕され、その後到着したパトカーに乗せられて連行されていった。



 たとえ、雪菜を愛していなかったとしても、子供と雪菜を守って穏やかに暮らしていく道もあったはず。

仕事が出来る智也なら、いつか社長になって、会社を大きくすることに生き甲斐を見いだすこともできただろう。

何が、智也をこんな強行に駆り立ててしまったの?


私がいけなかったのかな。

私が、ちゃんと智也を見て、智也の浮気に気づいて注意して、喧嘩して、仲直りして、二人の人生を歩んでたら、こんなことにはならなかった?

でも……

やっぱり、私は龍と生きる人生を選びたい。

龍に愛され、龍を愛して、二人で家庭を築いていきたい。

私の人生は、5年半、智也の人生と交わった。

でも、ただそれだけ。


龍とはこれから何十年も寄り添って生きていく。

そういう運命なんだと思う。

智也、ごめんね。
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