15年目の小さな試練
カナ以外の人におんぶされるなんて、どれくらいぶりだろう?
カナとは違う感触が、なんだかすごく変な感じだった。
「えーっと、医務室ってどこだっけ?」
エレベーターを待ちながら、幸田くんが田尻さんに話しかける。
「7号棟、1階」
「田尻、よく知ってるね。使ったことあるの?」
「最初の学校案内で教えてもらったじゃん」
「……そうだっけ?」
「ちゃんと覚えときなよ。いざって時に困るよ」
「だね。今日、これから覚えるわ。……来た来た」
エレベーターに乗り、独特の浮遊感に涙が浮かぶ。
「ハルちゃん、大丈夫? しんどい?」
手に力が入っていたのかな? 幸田くんが心配そうに聞いてくれた。
「……少し」
「牧村さん、7号棟、意外と近いから頑張って」
「……ん」
だけど、頑張るもなにも、わたしは幸田くんにおんぶされて運ばれるだけなのだけど。
なのに……気持ち悪い。
おぶられて揺られて、酔ったのだと思う。
胃の辺りがムカムカする。
「こっち」
田尻さんの声が聞こえる。
もう、目を開けられなかった。
「ほら、あそこの一階。案内あるでしょ?」
「ホントだ。あ、……なんか四月に来た気がする」
「遅いよ。てか、まだ一ヶ月しか経ってないじゃん」
「いやだって覚えること多すぎてさ」
幸田くんと田尻さんは情報学部。仲が良さそうでよかった、そんな事をふと思う。
「牧村さん、分かる? もう着くよ」
「……ん」
ささやくように答えると、田尻さんがそっと背中をさすってくれた。
それから少し後、幸田くんが立ち止まった。
トントンというノックの音の後、田尻さんの声が聞こえてきた。
「こんにちは~!」
同時に耳に届くドアを開ける音。
カナとは違う感触が、なんだかすごく変な感じだった。
「えーっと、医務室ってどこだっけ?」
エレベーターを待ちながら、幸田くんが田尻さんに話しかける。
「7号棟、1階」
「田尻、よく知ってるね。使ったことあるの?」
「最初の学校案内で教えてもらったじゃん」
「……そうだっけ?」
「ちゃんと覚えときなよ。いざって時に困るよ」
「だね。今日、これから覚えるわ。……来た来た」
エレベーターに乗り、独特の浮遊感に涙が浮かぶ。
「ハルちゃん、大丈夫? しんどい?」
手に力が入っていたのかな? 幸田くんが心配そうに聞いてくれた。
「……少し」
「牧村さん、7号棟、意外と近いから頑張って」
「……ん」
だけど、頑張るもなにも、わたしは幸田くんにおんぶされて運ばれるだけなのだけど。
なのに……気持ち悪い。
おぶられて揺られて、酔ったのだと思う。
胃の辺りがムカムカする。
「こっち」
田尻さんの声が聞こえる。
もう、目を開けられなかった。
「ほら、あそこの一階。案内あるでしょ?」
「ホントだ。あ、……なんか四月に来た気がする」
「遅いよ。てか、まだ一ヶ月しか経ってないじゃん」
「いやだって覚えること多すぎてさ」
幸田くんと田尻さんは情報学部。仲が良さそうでよかった、そんな事をふと思う。
「牧村さん、分かる? もう着くよ」
「……ん」
ささやくように答えると、田尻さんがそっと背中をさすってくれた。
それから少し後、幸田くんが立ち止まった。
トントンというノックの音の後、田尻さんの声が聞こえてきた。
「こんにちは~!」
同時に耳に届くドアを開ける音。