15年目の小さな試練

戻ってきたカナ

 金曜日の不調は幸い、長引くことはなかった。

 ただ、金曜日の内は怠さは引かず、食欲もなくて、お風呂もシャワーもパスして、ひたすら眠っていた。
 夜、起こされてゼリーをほんの数口食べて薬を飲んだような気がするけど、その記憶も曖昧なくらいで……。



 土曜日の朝、沙代さんに起こされた時には、身体の重さも大分マシになっていた。
 ちゃんと食堂に移動しておかゆも食べられた。だけど、起きて動ける程ではなくて、薬を飲んだ後にはベッドに戻ってひと眠り。

 お昼はパパに起こされて、おかゆを食べて薬を飲んでまたベッドへ。

 まだまだ本調子ではないけど、

「病院に行かなくて、本当に大丈夫かい?」

 と心配そうな顔をするパパに、

「もう大丈夫」

 と、笑顔を返す事もできるくらいには、楽になっていた。

 それでも、横になると自然とうとうとして気が付くと眠っているのだから、やっぱり身体はまだ疲れていたのだと思う。



 3時頃、ふと目が覚めると、かなりスッキリしていた。言いようのない気怠さもないし、胃腸の不快感もない。

 ああ、もう大丈夫だと思い、何気なく携帯電話を確認すると、カナからのメールが3通届いていた。
 昨日の夜に一通、今日の朝と昼に一通ずつ。

 メールには、わたしの身体を心配する言葉があふれていて、申し訳なくなってしまう。

 きっと、晃太くんから色々と聞いたんだよね……。

 いつもの事で深刻な状態ではないのだけど、晃太くんはかなり驚いていたから、少し大げさに伝わったんじゃないかな。

「兄貴も心配しているよ」の一言に申し訳なくて仕方なくなる。
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