15年目の小さな試練
「ああ、もちろん。でも、後一回か二回だけでいいの?」

 むしろ、このまま夏に入るまでと言われるくらいは覚悟していたくらいだから、後一、二回なら何の問題もない。

「うん。カナが……空手部に行くのが普通って状態になったら、わたしがいなくても通ってくれるかなって」

「……ん?」

 なんか不思議な言葉を聞いた気がする。
 それは、どういう意味だろう。

 俺の困惑を感じてか、ハルちゃんは慌てて先を続けた。

「あ、あのね。わたしが、カナが空手をするところを見たかったのも、本当だよ?」

「ああ、うん」

 そうだよね。先週の嬉しそうな、興奮して喜ぶ姿が嘘だったら驚くよ。

「えっとね……カナの生活を、わたし以外で埋めたくて」

「ん?」

 ハルちゃんからは、また不思議な言葉が飛び出す。

「カナ、この前、インフルエンザにかかったでしょう? 全然、熱が引かなくて」

「うん。こんな時期に拾ってくるとか、ある意味すごいよね?」

 ホント、あの丈夫な叶太がインフルエンザにかかったことより、こんな時期にどこで拾ったんだって方が気になるよな。

 ハルちゃんは真顔で話を続けた。

「カナって、いつだって……寝てる時まで、わたしのことを気にしてて、何て言うか、気が休まる時間がないみたいで……」

「ああ~」

 熱があるって実家に戻って来たと思ったら季節外れのインフルエンザだと言うし。大丈夫かと様子を見に行ったら部屋にも入れてもらえないし。

 あいつ、寝ても覚めても、熱があろうと関係なしに、ハルちゃんの事ばっかり言ってたよな。
 で、結局、お袋にスマホとパソコン取り上げられてたっけ。
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