15年目の小さな試練
「晃太くん、疲れた?」

 逆に聞き返されて、そのまま雑談へ移る。

「特に疲れたって訳じゃないんだけど、水曜日って週の真ん中だし、何となく気だるくない?」

「確かに」

 ハルちゃんはなるほどと笑う。

「火曜日は一週間が始まったばかりって感じで、木曜日には後少しって感じだけど、水曜日だと、まだやっと半分かって思うよね」

「そうそう」

 俺はハルちゃんににこりと笑いかけた。

 で、その気だるい水曜日に、ハルちゃんは来週からも見学するのだろうか?

 って、俺が聞いてもいいもの?
 まあ、俺が心配しなくても叶太が考えるか。

 それに、もう1~2ヶ月もすると、ハルちゃんが苦手な夏が始まる。夏前でも体調が悪くて見学しない日もあるだろうし、そう考えたら、もしかしたら、この見学会も四~五回程度で終わるのかも知れない。

「ハルちゃん、楽しんでる?」

 気持ちを切り替えて、問うと、

「うん!」

 ハルちゃんはとても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
 そして、そのままスッと笑顔を消して真顔になると、申し訳なさそうな表情になって口を開いた。

「付き合わせてしまって、ごめんね」

「いや、大丈夫だよ。空手って初めてで、見てると面白いし」

「ありがとう。えっと、……晃太くん、あのね、」

 ハルちゃんはそこで言葉を一度切る。言うべきか止めるべきか迷っているようで、視線が宙をさまよう。

「どうした?」

 促すと、とても申し訳なさそうな表情を浮かべて、ハルちゃんは言った。

「あのね、晃太くん、後一回か二回だけ、付き合ってくれる?」
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