15年目の小さな試練
「で、我が身を振り返ってみると、何となく告白されて、何となく付き合って、だけど、格別のめり込むように相手を好きになることもなく、って感じなんだよな。

求められて、好きだって言われて。……ただ、自分の方に身を焦がすような熱いものがなくても、それはまあそれでいいと思っていたんだけどね」

 そこで兄貴は一度言葉を区切った。

「お前たちだって、叶太の方が明らかに暑苦しくハルちゃんを想っていて、ハルちゃんの方はもっと穏やかな感じだもんな」

 いや待って、兄貴。

 言いたいことは分かるけど、何その、まるでオレが愛されていないみたいな言葉。やめてよ、ハルは表に出さないだけで、ちゃんとオレのこと愛してくれてるからね?

 だけど、空気を読んで、オレはその想いを口に出さなかった。
 オレが言葉を飲み込んでいると、兄貴は少しの間の後、また話し出した。

「だから、温度差は仕方ないと思ってた。……だけど正直、弟と私、どっちが大事なの? とか、義理の妹より彼女の方を大切にしてよ、とか言われて、うんざりした」 

「……え?」

 彼女さん、それはちょっとまずいんじゃないかな?

 元はと言えば自分が引き起こしたことと思いつつ、オレはそんな事を思った。

「兄貴、事情は説明したんだよね?」

 ハルには結構深刻な持病がある。だからこそ頼んだんだ。しかも、ずっとじゃなくて、オレのインフルエンザが完治するまでの間だけの話だ。

 いや、もしかして、その後の水曜日がダメだったか!?

 一週間は我慢できても、それが毎週となると許せないとか?
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