15年目の小さな試練
 カナはスッと手を伸ばすと、わたしの手に重ねて少しだけキュッと握ってくれた。

 大きな手のひらからはカナの温もりが伝わってきて、不思議なくらいホッとした。
 そんな自分に気付くと同時に、えみちゃんとの会話に戸惑っていた自分にも気付く。

 何も言わなかったけど、カナはわたしの気持ちが分かったのかな?

 思わず、カナの方を見ると、カナはふわりと優しい笑みを見せてくれた。



 授業が終わるのを見計らっていたかのように、先生が終了を告げたと同時に、また、えみちゃんが

「さっきの話だけどさ」

 と声をかけて来たけど、

「ごめんね。少し急いでるから、またにしてくれる?」

 と、笑顔でカナがさえぎってくれた。

「あ、うん。分かった」

 えみちゃんは、カナの言葉を聞くと、そそくさと荷物をまとめ始めた。
 その姿が、以前、晃太くんと一緒にお昼ご飯を食べた時の様子と重なる。

「じゃあ、またね、ハルちゃん!」

 えみちゃんは少しばかりぎこちない笑顔で、わたしに手を振った。

「うん。またね」

 そう返しながら、今日の話の続きをすることは、もうないのかもしれないと思った。

 えみちゃんを見送ってから、急いで教科書やノートを片付けなきゃと目を落とすと、既にカナがまとめて、ちょうど鞄に入れようとしているところだった。

「ありがとう。……ごめんね?」

「ん? なんで、ハルが謝るの?」

 聞かれて困る。

 でも、多分、カナはえみちゃんのこと、好きじゃないよね?

 だけど、まだまだ教室内に人が多い状態で、そんな話をする気にはなれなかった。
 言葉を返せずにいると、カナはニッコリ笑いながら、わたしの頭を優しくなでた。
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