15年目の小さな試練
 小学生の頃、校庭のクラス花壇に植えた花や野菜のお世話当番と言うものがあった。

 だけど、わたしに当番が回ってくることは決してなかった。そもそも、最初から数に入れてもらえなかった。
 三十分しかない休み時間に階段の上り下りをして、水くみ、水やりをこなすのは体力的に無理だろうって。

 無理を言えば、やらせてもらえたかも知れない。やりたいって言おうかな、って、少しは考えた。

 だけど、いつ体調を崩して休むか分からない自分が当番に入るのは、結局誰かに迷惑をかける可能性が高い気がして……。やらせて欲しいとは、どうしても言えなかった。

 多分、わたしが休んだ時はカナが代わりにやってくれるのだろう。そう思ったけど、最初からそれをあてにして、先生の気遣いを無碍にする気にはなれなかった。子ども心に、してはいけないのだと思った。




 中学生の時だったかな?

 クラス全員で体育大会の準備をしていた時にもそう言うことがあった。

「牧村さんはいいよ。無理しないで、そこで見てて?」

 先生の言葉に伸ばした手が宙に浮く。

 立て看板の色を塗るくらい、いくらわたしでも、さすがにできる。できるのだけど、その前日と前々日、体調を崩して休んだ後だった。
 だから、先生はわたしを働かせたくなったんだろうと思う。

「ハルちゃん、はい、椅子」

「座ってたらいいよ」

 いつの間にか準備された椅子。

 クラスのみんなの好意に何も言えずに、同じ場にいながら、一人すみっこで椅子に座り、ただ、みんなが作業するのを見ていた。


 
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