15年目の小さな試練
 何より、わざわざ謝ってくれるところとか、わたしの表情を読んで言葉を待ってくれるところとか、気遣いがないどころか、むしろ気遣いできる人なのではないかな?

 そんなことを考えていると、えみちゃんは、再度真顔になって続けた。

「えっとさ、私、おしゃべりだけど、人の話は聞けるつもり。しゃべり過ぎてたら、止めてくれていいし、変なこと言ってたら怒ってくれていいからね?」

 そんな言葉に思わず、お腹の辺りがほっこりと暖かくなる。

 そして、ふと思い出す。

「あのね、じゃあ、えみちゃん、ひとついいかな?」

「うん。何でも言って」

 えみちゃんは真剣な顔をして頷いた。

「誤解だけ、解かせてね?」

「誤解?」

「うん。えっと、えみちゃんが聞いた噂がどんなのか、よく分からないんだけど……」

 わたしは、その後、お嫁に行ったんじゃなくてカナがお婿に来たのだとか、だから牧村はわたしの名前で、カナが名字を変えたのだとか、そんな話を伝えた。

 高等部からの友人なら、みんなが知っていること。

 えみちゃんは、楽しそうにわたしの話を聞いてくれて、そこから質問があふれ出て、あっという間に時間は経ち、窓の外が暗くなる頃、カナが声をかけてきた。

「そろそろ、出ようか?」

 既に、支払いは済ませてあって、えみちゃんは恐縮しまくった後、カナにいっぱいお礼を言って。

 そのままうちの車で、えみちゃんを駅まで送って行った。
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