15年目の小さな試練
オレだって分かってた。
本当はもっと早くに止めなきゃいけなかったんだ。
家族の中で一番に過保護なのはオレだと思う。いつもだったら、ここまで待たずに止めていた。
今回だって気をつけてはいた。
気をつけないはずがない。
……だけど、今回は……やっぱり、間違えたんだよな。
オレがうなだれているのを見て、明兄は
「まあ、済んだことはいいさ。大事には至らなかったし、今後、何があっても、卒業まではこぎ着けそうだしな」
とニヤリと笑った。
「えーっと、それって……」
どういう意味なんでしょうか、明兄?
「山野准教授のことを新聞沙汰にもしないし、週刊誌にも売らないし、ネットに書き込むこともしない。大学側もそりゃあ感謝するだろう?」
……明兄が黒い。
思わず絶句すると、明兄はとっても綺麗な笑みを浮かべた。
……これ、何考えてるか知らなかったら、イケメンの極上の笑みって思うんだろうか?
そんな事を思うくらいには、明兄は楽しそうに輝く笑顔を見せる。
「……でも、そこまでの事かな?」
確かに、嫌がらせはされていたと思う。だけど、もしハルに持病がなければ、今でも普通に楽しく勉強を進めていたかも知れないくらいには、ハルは楽しそうだったし、出された課題を解くことには困っていなかった。
そういう意味では、悪質ではあったけど、山野先生の目論見は外れていたとも言える。
「叩けば幾らでもホコリが出るって言っただろ?」
あきれたようにそう言い、明兄は鞄の中から、A4サイズの封筒を取り出すと、ポンとオレの方に投げて寄越した。
本当はもっと早くに止めなきゃいけなかったんだ。
家族の中で一番に過保護なのはオレだと思う。いつもだったら、ここまで待たずに止めていた。
今回だって気をつけてはいた。
気をつけないはずがない。
……だけど、今回は……やっぱり、間違えたんだよな。
オレがうなだれているのを見て、明兄は
「まあ、済んだことはいいさ。大事には至らなかったし、今後、何があっても、卒業まではこぎ着けそうだしな」
とニヤリと笑った。
「えーっと、それって……」
どういう意味なんでしょうか、明兄?
「山野准教授のことを新聞沙汰にもしないし、週刊誌にも売らないし、ネットに書き込むこともしない。大学側もそりゃあ感謝するだろう?」
……明兄が黒い。
思わず絶句すると、明兄はとっても綺麗な笑みを浮かべた。
……これ、何考えてるか知らなかったら、イケメンの極上の笑みって思うんだろうか?
そんな事を思うくらいには、明兄は楽しそうに輝く笑顔を見せる。
「……でも、そこまでの事かな?」
確かに、嫌がらせはされていたと思う。だけど、もしハルに持病がなければ、今でも普通に楽しく勉強を進めていたかも知れないくらいには、ハルは楽しそうだったし、出された課題を解くことには困っていなかった。
そういう意味では、悪質ではあったけど、山野先生の目論見は外れていたとも言える。
「叩けば幾らでもホコリが出るって言っただろ?」
あきれたようにそう言い、明兄は鞄の中から、A4サイズの封筒を取り出すと、ポンとオレの方に投げて寄越した。