15年目の小さな試練
「じゃあ、オレたち行くな。立ちっぱなしはハルも疲れちゃうし」

「ああ、悪かったな、呼び止めて」

 谷村くんはそう言うと、にっこり笑ってカナの肩をポンと叩いた。

「じゃ、叶太、入部考えといてな。まずは体験来いよ」

「いや、オレ、それさっき断ったよな?」

「まあまあ」

 まあまあじゃないし、とカナがぼやく。

「とにかく、またな」

「ああ、今度飯でも食おうぜ」

「機会があったらな」

 谷村くん誘いにカナはつれない答えを返した。

「いや、機会作れよな?」

 その言葉には答えず、カナは笑いながら軽く手を上げ、歩き出す。

「ハルちゃん、長い時間ごめんね。また会おうね!」

 後ろから飛んできた言葉に、少し振り返って肩越しに返事を返す。

「うん。……なんか、ごめんね」

 バイバイと手を振ろうと上げたのだけど、カナに肩を抱かれていてうまくいかず、谷村くんはそんなわたしたちを見て、面白そうに笑っていた。
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