15年目の小さな試練
 大学に入ってから、レポートや課題の提出などでパソコンを使う必要が出てきた。
 パソコンでレポートを書いて、そのままメールで提出する授業があるのだ。

 そんな訳で必要に駆られて、パソコンを買ってもらった。ブルーライトをカットするフィルターも付けてもらったし、ブルーライトカット眼鏡も買った。そのおかげか、多少疲れているくらいの状態なら、パソコンを触れるようになった。

 だけど、操作についてはまだカナに頼りきり。
 レポートの入力だって、カナは直接パソコンで打っているのに、わたしは紙に書いた下書きを見ながらパソコンで清書。

 カナがいつも途中で、

「打ち込んどくから、ハルは寝な? もう遅いよ」

 と助けてくれる。
 図表だって、カナが別のソフトを使って作ってくれる。

 それだけじゃなくて、高校までと同様、カナは毎朝毎晩、学校にいる日中どころか眠っている時間さえもわたしの事を気にしてばかりいる。
 深夜、体調が悪くて目を覚ました時はもちろんのこと、夜中、ただトイレに行く時でさえ、カナは一緒に起きて、わたしを気遣ってくれる。

 カナに心の安まる時間なんて、あるのだろうか?

 わたし、カナに甘えてばっかりだ。
 これじゃ、カナも疲れるに決まってる。

 じゃなきゃ、何年も風邪すら引いていなかったカナが、こんな季節外れにインフルエンザなんて拾ってくるはずがない。

 ……自立しなきゃ。

 取りあえず、パソコンくらい自分で扱えるようになろう。
 何をするのが一番早いだろう? ここで誰かに頼るのは違う気もするけど、素人が一人で頭を悩ませるより、きっと聞いた方が早い。

 パパは今日はお休みで一日家にいる。パパから溺愛されている自覚はある。聞きに行ったら、きっと喜んで教えてくれる。

 わたしはノートパソコンを手にすると、久しぶりに二階への階段を上がった。


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