15年目の小さな試練
「ごめん。オレ……なんか、ハルのこと見くびってた」

 思わず頭を下げると、ハルは驚いたように目を見開いた。

「なんで、カナが謝るの?」

「いや、……オレ、ハルが選ぶ学部に行くなんて言って、考えることも全部放棄してたなって。……ハルに全部押し付けてた……よな」

「でも」

「うん。やっぱり、何があってもハルと同じところがいいし、離れるとか考えられない」

 オレはぎゅっとハルを抱きしめた。

「だけど、……本当は丸投げなんてダメで、やっぱりオレも一緒に考えなきゃないけなかった」

 それにそう。ハルが選んだのが経営学部だからよかったけど、本当に理系の学部を選ばれていたら、どこでも良いとか言ったくせに、最悪、ハルに「やっぱりオレが確実に入れる学部にして!」ってお願いする羽目になっていたんだ。でもって、もしハルが絶対にそれを学びたいと言ったら、最悪、違う学部になっていたかも知れない。

 心の底でひやりと肝を冷やしつつ、ハルの肩に頭を乗せて項垂れると、ハルはくすくすと笑い出した。

「……笑うとこ? オレ、割と真面目に反省中なんだけどなぁ〜」

 思わずぼやくと、ハルはそれでもまだ笑いながら、オレをギュウッと抱きしめてくれた。

「ごめんね。わたし、カナがもう、普通の就職しなくても生活できるだけの収入があるって、知ってるよ?」

「ん?」

「だから、わたしに合わせてくれるんだと思ってた」

「合わせて?」

「うん。それでね、将来何をしたいかちゃんと考えて選んで、しっかり勉強しろって言われてる気がして、色々考えたんだけど……」

「え? しっかり勉強しろって、オレがハルに?」

「そう」

「まさか! そんな、おこがましい!」

 思わず 大きな声を上げると、ハルは驚いたように動きを止めた。
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