異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「雪はよく俺たちのおかげで前に進めるようになったって言うけど、少し違うと思う。雪はもともと、自分の力で前に進めるだけの力があるんだよ。俺はそばにいて、きみの明るさに引っ張られていくのを感じているからわかる」

「たとえそうだったとしても、最初の一歩をくれたのはエドガーだよ。ありがとう」


何度感謝してもしたりないな、と思っているとロキが私たちのところにやってくる。


「邪魔しちゃって、ごめんなさいね。雪、お客さんが来たわ」

「あ! ひとりで店番させちゃってごめんね。すぐに行きますっ」


私は寒天ゼリーが入っていた空のお皿をトレイに乗せて持ち、勢いよく立ち上がる。

すぐにランチワゴンのほうへ足を踏み出したのだが、大事なこと思い出してエドガーを振り向く。


「いつも皆が夢を叶えるために必要なランチワゴンを整備してくれて、ありがとう。でも、私が声をかけなくても、ときどき休憩は入れてね。エドガー、集中すると寝ないし、ご飯も食べ忘れるくらい没頭しちゃうから」


念を押すとエドガーは参ったなと言いたげに後頭部に手をてて、「わかりました」と苦笑いしていた。




カイエンスに来てから二週間、ニコ二コ弁当屋はおかげさまで大繁盛していた。

ようやく長い列になっていたお客さんをさばききったとき、 消沈しきった顔のロズベルトさんがやってくる。


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