異世界ニコニコ料理番～トリップしたのでお弁当屋を開店します～
「話は聞かせてもらいましたよ。競争相手の言葉を信じるだなんて、マヌケとしか言いようがありませんが、 姑息な真似で人を蹴落とそうとする輩はそれ以上に愚図です。 試験会場までの最短ルートを探しましょう」


オリヴィエは荷物をランチワゴンに運ぶと、地図を手に戻ってくる。

それをテーブルの上に広げると、赤いペンで目的地までの最短ルートを割り出した。


「この道を通れば十分は短縮できます。試験開始と同時に到着になりますね」


絶対に大丈夫とは言い切れない状況に皆の顔が曇ったとき、｢どうかしたの？｣とエドガーがやってくる。

コンロの調子がおかしくて修理を頼んでいたのだが、彼は人の気持ちの機微に敏感なので皆の様子がおかしいことに気づいたのかもしれない。

エドガーはスパナを手に持ったまま、不思議そうな顔をして私の隣に立った。


｢実はね、ロズベルトさんが……｣


事情を説明すると、エドガーは考え込むように顎に手を当てる。


「ランチワゴンなら、馬車の倍の速さで走れるよ。ただ、時速重視で造ってないから、途中で原動機がオーバーヒートするかもだけど、試してみる価値はあると思う」

「それ、ランチワゴンが使い物にならなくなる可能性があるということですか？」


オリヴィエの疑問にエドガーは頷いて、「雪、どうする？」と尋ねてくるが、答えなんて考えるまでもなかった。


「ランチワゴンはエドガーがいれば、いつだって生み出せる。けど、ロズベルトさんの夢には替えがきかない。急いで試験会場まで連れていってあげよう！」


その答えを聞いたロズベルトさんは涙ぐんでいた。

こうして私たちは店じまいをすると、オリヴィエが導き出した最短ルートで試験会場に向かったのだが──。


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