異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「そもそも、夢を追うってなんです? どこまで追求したら叶ったことになるんでしょうか。僕は成り上がるのが夢でしたけど、実際に金持ちになっても満たされません」


オリヴィエは、まるで自分自身に問いかけているようだった。

皆の話を聞きながら、ロキの耳を持ち上げたり下げたりしていたランディが口を開く。


「夢のねえ俺からしたら、贅沢な悩みだと思うぜ。夢があるだけいいじゃねえか。向かう先が明確に見えてんだろ? 俺より何歩も先に、いんじゃねえか」

「夢を追い続けられるだけ、恵まれていると俺は思うがな。だから、それを簡単に手放すのは惜しい」


バルドはまだ、騎士として剣を振るいたかったのだろう。


それでも、やむおえず夢を諦めなければいけなくなったら? 


私が料理を作れなくなったら他になにができるのかと考えるだけで、未来が闇に閉ざされたみたいに怖くなった。

各々考えを巡らせているのか会話がやみ、ザブンザブンと寄せては返す波の音だけが辺りに満ちる。


「夢が叶う叶わないの基準、夢があることが幸せか否か。結局のところ、答えがないから苦しいのかもしれないわね」


沈黙を破ったのはランディに耳を引っ張られていたロキだった。

ぽつりとこぼされたロキの言葉は皆の考えをまとめて代弁してくれたようで、いちばんしっくりくる。


これから先、どうなるのだろう。


そんな期待と不安を胸に抱きながら、私たちは静かに地平線に消えていく光を眺めるのだった。




< 133 / 204 >

この作品をシェア

pagetop