異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「でもあのブローチ、高価なものだったんでしょう? 売っちゃってよかったの?」
私が勝手にやると言い出したことなのに、巻き込んでしまったことを申し訳なく思っているとエドガーは首を横に振った。
「もう俺には必要のないものだからね。騎士団の皆さんのために使われるなら、あのブローチも本望だよ」
それを聞いていたオリヴィエは、私たちを値踏みするようにじろじろと観察する。
「騎士団……あなたたちは騎士団の使いかなんか……なわけはありませんね。資金を持っていませんし。しかも、こんな大量の食材をどうするんです?」
「私たちは騎士団の使いじゃないけど、これは騎士の皆さんのために使う食材だよ。騎士団の皆さん、戦うために力を蓄えなきゃいけないってときに干し肉と硬いパンだけしか食べてなくて、なにか栄養のあるものを作ってあげたいんだ」
駐屯地にいた騎士の皆さんは大勢いたので、食材も手では持ち帰れないほどある。
事情を説明すれば、見かねたオリヴィエは怪訝そうにしながらもたくさんの荷物が運べるという幌馬車を用意してくれた。
「他人のために、よく無利益で働こうなんて思いますね」
オリヴィエの皮肉と呆れが入り交じったような言い方に、私は「うーん」と唸りながら本当に無利益だろうか?と疑問に思った。