異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「この国を守るために戦ってる騎士団の皆さんの食事でしょ? それって直接的じゃなくても、この国を守ることに繋がってるんじゃないかな。オリヴィエだって、そうだよ」
「はい? 僕はなにもしてませんけど」
「オリヴィエの食材があるから、私は料理を作れる。私の料理を食べて、騎士の皆さんが元気になる。私たちは巡り巡って、この国の未来を守るお手伝いをしてるって考えたら、無利益なんかじゃないよ」
損か得かなんて考えていない、私は自分の心に従っているだけだ。
ただそれだけのことなのに、オリヴィエもエドガーも面食らった様子で固まっていた。
まるで、未確認生物を目の当たりにしたような顔だ。
「雪みたいな考え方の人間がたくさんいたら、戦争なんて起こらないんだろうね」
エドガーの優しげに細められた双眼に見つめられて、くすぐったい気持ちでいるとオリヴィエは盛大にため息をついた。
「もろもろの事情とそっちの雪……でしたっけ? あなたがお気楽で能天気なことはわかりましたよ。僕も騎士団に恩を売って新たな取引先にしてもらえたら儲けもんですし、同行させてもらいます。そのついでに荷物運びくらいは手伝いましょう」
ちゃっかり商売をしに行こうとしているオリヴィエに現金だなと思いつつも、私たちは駐屯地へ戻った。
駐屯地に着いてさっそく、私は手を洗って炊き出し場で調理を始めた。
お米を水に浸している間にトマトカツ丼の汁を作るため、鍋に水と昆布、みりんがないので砂糖とお酒を入れて中火にかける。
沸騰したら火を止めて醤油の代用品――プランブランを入れた。
それから汁の具材である玉ねぎを櫛形に、トマトは大きめに切る。
トッピングのネギはこの世界になかったので、似た色と味の【ジャーミン】という草を代用して包丁で刻んだ。
切った具材は今汁の中に入れてしまうとしなるし、煮崩れてしまうので一旦さらに移し、置いておく。