異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~


「お米と汁の具材の準備ができたら、今度はカツを作ります」


皆が囲むように私の手元を覗き込んでいるので、なんとなく解説しながら豚ロースの筋を包丁で切り、塩コショウをまんべんなくかける。

この世界ではまだ小麦粉が薄力粉や中力粉、強力粉といった感じで三種類に分けられていないらしく、お店にはひとまとめに小麦粉と書かれた紙袋が置いてあった。

なので、それを豚ロースにまぶした。

続いて溶き卵と、パン粉もお店にはなかったので騎士の皆さんに支給されていた硬いパンを細かくみじん切りにして作ったものをつける。


「これを油で焼きますから、皆さん火傷しないように離れていてくださいね」


私はあらかじめ火をかけていた油の入ったフライパンに、豚ロースを入れて揚げる。

焚き火で料理するなんて、初めてかも。

コンロじゃないので火加減が難しく、私はフライパンを持って火に近づけたり、遠ざけたりして温度を調節した。

ときどき風にあおられて大きくなる火が私の頬を火照らせていく。

そんな私を心配してか、エドガーがフライパンの持ち手を横からやんわりと掴んで取り上げた。


「雪、火に当たりすぎだよ。顔が赤くなってる。このカツは俺が揚げるよ。なにをどうしたらいい?」

「とっても助かる、ありがとう。これは表面がきつね色になるまで、両面ひっくり返しながら揚げてくれる?」

「うん、了解。わからないことがあったらまた聞くよ」


カツ作りを手伝ってくれるエドガーに感謝していると、私の制服のスカートを誰かが引っ張った。

振り向くといつの間に隣にいたのか、木箱の上に乗ったロキが騎士たちの目を気にしながら私に小声で話しかけてくる。
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