異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「まずは一丁出来上がりです! 勝負に勝つ、『トマトカツ丼』弁当ですよ」
お弁当を前に出すと、「なんだそらあ、ダジャレか?」「なんだかよくわからない食べ物だけど、いい匂いがするな!」「肉がうまそう~」という声があちこちから聞こえてくる。
私はエドガーと一緒に、せっせと大量の『トマトカツ丼』弁当を作った。
するとそこへ周辺の偵察に行っていたバルドさんと、幌馬車から荷物を下ろしてくれていたオリヴィエが炊き出し場にやってきた。
「お帰りなさい、バルドさん、オリヴィエ。それからエドガーも、お疲れさま。三人とも、これを食べてお腹も心も満腹にしてください」
お弁当を渡すと、三人の口元が自然に緩むのがわかった。
エドガーたちがその場に腰を下ろすのを見つつ、私はロキにもウサギが食べても大丈夫そうな野菜の盛り合わせ弁当を出してあげる。
「私にもあるのね。ありがとう、雪」
「当然だよ。ご飯は皆で食べるからおいしいし、その時間が楽しくなるんだよ」
ロキと顔を見合わせてこっそり笑い合っていると、その光景を見たオリヴィエが握っていたフォークを落とした。
「ウ、ウサギが人の言葉を話してませんか!?」
「あ、オリヴィエは知らなかったんだよね。驚かせてごめんね」
少し離れた場所で『トマトカツ丼』弁当を頬張っている騎士たちを気にしつつ、私は顔の前で手を合わせて小声で謝る。
彼らの驚きようをみると、異世界のウサギは全員喋るわけではないらしい。