異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「痛っ、なにするんですか!」
「ひと言多いのよ、オリヴィエは」
腰に手を当てて叱っているロキにやっぱりお母さんみたいだと思いながら、私は馬車の窓に手をついて流れる景色に視線を移す。
「わあ……」
そこは時計塔も協会も立ち並ぶ家々も、全てが白亜と金装飾にあふれていた。
エーデの町に比べて石畳の道は舗装されているせいか、馬車で走ってもガタガタ揺れない。
生まれてこの方、見たことのない世界に感動していると後ろから同じ窓をエドガーが覗き込んでくる。
「ここが王都だよ。綺麗だよね」
「うん、本当に……私のいた世界と全然違う」
少し、しんみりした言い方になってしまったからか、エドガーは気遣うように「帰りたい?」と尋ねてくる。
ここは当然、『帰りたい』と答えるところなのかもしれないけれど、どうしても喉がつかえて返事ができない。
だからか、「どうだろう」なんて曖昧な言葉が口をついて出た。