異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「誇り高きパンターニュの騎士団たちよ、大儀だったな」
歳不相応の堅苦しい口調で労いの言葉をかけた少年に、騎士たちは頭を垂れる。
大の大人が子供にひれ伏している光景に唖然としていると、少年は身体を騎士たちの隣に控えていた私のほうへ向けた。
「我が同胞を戦場で救ってくださった恩人のご一行も、はるばる王都までご苦労だった。私はシャルル・オーゼ・パンターニュ、この国の王だ」
「ええっ、王様!?」
どっからどう見ても、小学生だよね!?
王様の前だというのに叫んでしまう私に、シャルル国王の宝石のごとく煌く聡明なペリドットの瞳が向けられる。
「あなたがバルドの言っていたお弁当屋か。黒い髪に瞳……それから珍しい身なりをしている。風変わりではあるが、素敵な女性だ。よければ、お名前を伺っても?」
小学生……ではなく、シャルル国王の口から息をするように女性を喜ばせるような賛辞が飛び出す。
呆気にとられつつも、「野花雪です」と自己紹介した。
「雪、それから彼女の仲間たちにも謝礼金を贈らせてもらおう」
「あ、いえ! 私が勝手にしたことですし、私の分はなくていいです」
王様から頼まれてしたならまだしも、自分が望んでしたことに謝礼金なんてもらえるはずがない。
本当なら、私の謝礼金をブローチを売ってお金を立て替えてくれたエドガーに渡すべきなのだろうけれど、それは人様から貰ったお金ではなく、自分で稼いだお金でなければいけないと思う。