異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~


「慎ましやかなのだな、雪は。だが、できれば受け取ってほしい」

「王様……」

「この国は私が生まれる前から、ベルテン帝国の侵略を受けている。前国王も、その戦での負傷が原因で崩御した」


静かに王様の置かれている状況を語られ、私は「え……」と言葉を失う。

前国王、つまりシャルル国王のお父さんは戦で亡くなった。

私の身近には起こりえないことがこの世界では当然のようにあって、頭が追いつかないでいる間にも王様の話は続く。


「幼い私の即位は簡単にはいかず、国王が不在である今が好機とばかりにベルテンの皇帝は容赦なくパンターニュに攻め入ってきた。私が即位したときにはすでに、いくつかの領地がこの手を離れていてな」


私の国でいえば、彼はまだ大人に守られるべき小学五年生だ。

それなのに親も失って、それでいて国の主として凛然と振る舞っている。

そこで初めて、彼が大人びている理由がわかった気がした。

日本の一般的な小学生と彼とでは、背負っているものが圧倒的に違いすぎるのだ。

その事実が胸を締めつけてくるのと同時に、私と同じで大切な人を失ったけれど、それでも前を向いている王様の姿に背筋が伸びる思いだった。
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