異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~


「そうよね、おかしいわよね……。私はきっと、ここにはいちゃいけないのよ」


耳をぺたんと下げるロキに、私は手を止めて勢いよく首を横に振った。


「そんなわけないよっ」


目線を合わせるように腰を落とした私はどうしてロキがそんな考えに至ったのかはわからないけれど、食い気味に否定する。


「ロキはおかしくないし、私はお喋りできて嬉しい。ここにいちゃいけないなんて、そんなことない!」


必死に言い募れば、ロキは「ありがとう」と曖昧に微笑む。

さらに言葉を重ねようとしたとき、ロキが「そろそろお米が炊けてるんじゃない?」と窯を手で差した。


「あ、忘れてた!」


私は急いで窯を火の元から離し、蒸らすために炉の端に置く。

その数分の間にロキとの会話は頭からすっかり抜け落ちていた。

私はトウモロコシを茹でて実を外し、蒸らし終えたご飯に塩コショウと一緒によく混ぜ合わせる。


「本当は崩れ防止に海苔があればよかったんだけど、お店では見つけられなかったから、きっと異世界にはないんだよね」


なので先ほど炒めた生姜焼きをレタスとご飯で挟み、包丁で二等分して出来上がった『おにぎらず』をお皿に並べる。

エドガーの発明品であるポットのようなものでお湯を沸かし、【ムーギ】という抹茶に似た苦みがあるお茶を淹れるとトレイに載せた。
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