異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~


「ありがとう、オリヴィエ! すっごく可愛くできてる。大事に使わせてもらうね」

「お礼を言う必要はありません。私は代金分の働きをしたまでですから」


淡白な態度をとるオリヴィエだけれど、わずかに声が震えていて耳も赤い。

実は照れているのかもしれないと思ったら、少しだけ彼への苦手意識が薄らいだ気がした。




オリヴィエのお店を出て、エドガーの家に帰ろうと町中を歩いていると、「あれ、雪ちゃんじゃないか!」と声をかけられた。

名前を呼ばれて振り向くと国境付近の駐屯地で知り合った騎士のひとりが酒場から出てきて手を振ってきたので、近寄って頭を下げる。


「お久しぶりです」

「一ヶ月ぶりだなあ。俺たちは国境線の周辺を見回ってた帰りなんだよ。そうだ、雪ちゃんも一緒に飲もうぜ」

「えっ、いや、私は未成年なので飲めな──」

「なんだあ、そりゃあ。下戸ってことか? なあに、心配いらないって。すでに下戸なのに酔い潰れてる男がいるからな」


なにが心配いらないのかはわからないが、異世界の法律は未成年でも飲酒が可能らしい。

私は引きずられるようにして酒場の階段を下りていくと、レンガ造りの壁に囲まれた空間に出た。

木製のテーブルに酒樽の椅子が乱雑に並んでいて、大勢の酔っ払いが騒いでいる。


「ささっ、こっちこっち」


騎士の人に案内されたのは、信じられないことにテーブル突っ伏しているバルドさんのところだった。
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