異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「そんなに急いで、今後のことを決めなくてもいいんじゃないですか?」
「……大の大人が無職というのも、格好がつかんだろう」
「そうかなあ? だって、自分の未来のことですよ? 後悔しないように、じっくり考えてから答えを出したほうがいいと思うな」
休むことって、そんなにいけないことなのかな?
お母さんは無理をして、過労が祟って事故を起こした。
一生懸命なのは素晴らしいことだし、頑張ってるお母さんも大好きだけれど、死んでしまっては意味がない。
そのこととバルドさんのことが直接どう関係しているのかと言われると頭から知恵熱が出そうになるが、焦ってもろくな答えは出ないと思うのだ。
「あ、そうだ。私、これからお弁当屋を開いて全国を回るんです。もし、これからのことに迷ってるなら、旅をしながら考えるのってどうですか?」
「旅をしながら?」
「そう! いろんな人に出会って、いろんな世界を見て、自分のしたいことを探すんです」
エドガーが言っていたように、バルドさんが焦っているのは立ち止まっていることが怖いからではないだろうか。
私と同じでバルドさんももがいているのだ、きっと。
私は皆と旅をしながらお弁当屋を開くなんて、わくわくするなと胸を躍らせながらバルドさんの答えを待つ。
バルドさんは考えるように視線を宙に投げると、ふっと口元を緩める。