異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「本当にありがとう。ランチワゴンを作ってくれたことだけじゃなくて、私の背中を押してくれたことも、全部ぜんぶありがとう」
「礼を言うのは俺のほう。俺、親の仕事を継ぐよりも発明家として生きていきたくて家を飛び出したんだけど、この発明が誰かの役に立ったことってなかったんだ。でも……」
私を見て目を細めるエドガーに、胸がとくんと静かに音を立てる。
エドガーの碧眼がいっそう澄んでいく気がして吸い込まれそうだと思っていると、決意を感じさせる強い一声が耳に届く。
「雪といたら、誰かのために自分の知識と技術を生かせるかもしれない。俺が発明をする意味を見つけたいんだ。だから、きみの旅に俺も一緒に連れていってほしい」
「エドガー……正直言うとね、ひとりで異世界を旅するなんてすっごく心細かったの。だけど、エドガーが一緒に来てくれるなら、きっと楽しい旅になるって思うから……。これから、よろしくお願いします!」
私がエドガーと握手を交わしていると、近くで土を踏む音がした。
エドガーと同時に振り向けば、相変わらず強面な顔でバルドさんが片手を上げながら近づいてくる。
「この間の返事をしにきた」
それがなにを指すのかは、すぐにわかった。
バルドさんは酒場で旅に誘ったときの答えをくれるのだろう。
私は大きな荷物を肩に担ぎ、目の前に立つバルドさんに向き合う。