恋なんて、しないはずだった
──やっぱり、今日会うこと諦められなくて、待ち合わせ場所にきちゃった。

──待ってる。会いたい。


「なんだこのメッセージ。俺、見てねーよ」


──ごめん。友達が心配だから行けない。今日中に帰れるかもわかんないから、家に帰ってて。


「俺、返してないんだけど........」


ハッとなった俺は駆け足で瑠樺の母親の病室へと向かう。


「瑠樺、お前か?これ返したの」


椅子に座って母親のことを看ている瑠樺へスマホの画面を見せる。


「........お前か?ってあたし以外いるの?」

「いるの?じゃねーよ。なんでこんなことすんだよ」

「そんなの、大我に傍にいて欲しいからに決まってるじゃん」

「だからって、碧のこと傷つけていいわけねーだろ。俺、行くから」


碧はこんなメッセージを見たあとも俺のことを信じて待っててくれてるんだ。
俺は、そんな碧のことを裏切りたくはない。
ちゃんと瑠樺のことも話して、謝る。


「待ってよ、大我。ほらこれを見て」


瑠樺が自分のスマホを俺に渡す。


「なんだよ........は?」


その画面に映っていたのは、今日俺たちが待ち合わせするはずだった公園のベンチの前で、キスをする男女の姿。

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