恋なんて、しないはずだった
「無視とか、いい度胸してるよねー。これ、見てもなんとも思わないのかなぁ?」



ニヤリと笑って、彼女はスマホの画面をあたしに見せる。



「.......っ」



スマホの画面を見た瞬間、ドクリと心臓の音が大きくなった。



「あんたが前にいた学校、あたしの従兄弟が通ってるの。結城千景(ゆうきちかげ)って言うんだけど、知ってる?」


「.......ちか、げくん」



彼の名前は久しぶりに口にしたと思う。



「やっぱ知ってるんだ?千景ねー、あんたに弄ばれたって言ってたよ?いま、そんなふうに隠れて生きてるくせに、本性は違うとか笑える」



キャハっと笑っていながら、その目はあたしを馬鹿にしているような、挑発しているような目をしてる。、



「もう、前の学校のことは言わないで.......あたしは、何もかも忘れたの」



自分の大切なもの、大切にしてくれていた人、全てを捨ててまでここに逃げてきたんだ。



「だったら、大我くんから離れなよ!」


「別にそばにいるつもりもないです」


「なに?大我くんの方から来てるとでもいうの?あー、得意の誘惑?してるのか」



可笑しそうに言って、あたしを着替えスペースから突き出す。

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