同期は蓋を開けたら溺愛でした

 どうやって大友のアパートまで帰って来たのか思い出せない。

 大友と同じ気持ちではないかもしれない。
 そんな思いが渦巻いて上手く顔を見られない。

 玄関で立ち尽くし、動けない私へ、大友は質問を向けた。

「もしも俺が恥も外聞も投げ捨てて居酒屋で言っていなかったら……」

「恥も外聞もって、そんなに?」

 私が驚きの声を上げると大友は呆れた声を出す。

「そりゃそうだろ。同期だぞ。席も隣なんだぞ」

「それは、そうだけど」

 サラッとなんでもないみたいに言ったくせに。
 その文句は言えずにいると、思わぬ台詞を言われた。

「せめて俺との関係がはっきりするまでは、他の男によそ見するなよ」

 釘を刺されて、なんとなく面白くない。
 増永さんと食事なんて行くつもりもなかったのに、信用されていないのかと思うと悲しくなる。

「お前、増永さんに流されてたんじゃないのか?」

「はい? なにが?」

 棘のある言い方にこっちも言い方が強くなる。

「俺が好きだって言わなかったら、増永さんと付き合ってただろって言ってんの」

 そんな『もしも』の話を問いただされてもどう答えていいのか分からない。

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