同期は蓋を開けたら溺愛でした
水野さんに約束を取り付けられ、終業後に会社近くのカフェに来ていた。
断ればいいものを、現実から逃げてばかりいる自分に嫌気が差していたし、今は誰でもいいから側にいて欲しかった。
例え、その人に打ちのめされるとしても。
改めて会う水野さんは綺麗だった。
華奢で色白で長い髪がよく似合う。
赤い小さな唇が私に向けて言葉を発した。
「雄大さんと付き合っていた頃の私は、どうしようもなく雄大さんが好きでした」
彼女の独白をどういう気持ちで聞けばいいのか、複雑な思いでただ受け止める。
彼女は前とは違って穏やかに続けた。
「青木さんとのことでひどく落ち込んでいた雄大さんに私から迫ったんです。身代わりでもいいのでって」
そこまでの想いだったのかと思うと胸が苦しい。
それなのに水野さんは笑って言う。
「そんな一方的な想いで上手くいくはずがないんです。途中までは応じてくれたんですけど、苦しそうな顔をして「悪い」って」
驚いて顔を上げると、水野さんは優しく微笑んだ。
「今の雄大さん、その時と同じくらいつらい顔をされてるから見ていられなくて」
彼女のどこまでも深い愛情を感じて、本音がこぼれた。
「水野さんみたいな人が側にいてあげるべきなんですね」
すると水野さんは目を丸くして、花が綻ぶように笑いながら言った。