同期は蓋を開けたら溺愛でした

「あれ。青木ちゃん」

 声をかけられて顔を上げると同期の阿部くんが手を上げて親しげに近づいてきた。

「大友、飲み過ぎてへばってない? あいつは、のらりくらりとかわしてはいたけどな」

 阿部くんも北川くんを含む大友が仲良くしている4、5人に入るメンバーの1人。

「朝からあくびしてたよ」

 阿部くんとは大友と里美の4人で飲みに行っていた時期もあって、私自身もそれなりに仲はいい。
 阿部くんと里美が付き合うようになって、4人で飲みに行く機会は減ってしまったけれど。

「試作品を取りに来たんだね。これ、先輩が初期の頃から作ってて、いい試作作って商品化させるぞって意気込んでた」

 棚からトレイに入れられていたカッターの試作品を手渡された。

「ありがと。私も絶対に商品化したい」

 私だけじゃない。
 みんなの思いが詰まってる。

 特許を調べてくれた知的財産管理部の担当の人までも、企画が再始動したと耳にしましたという内容のメールをわざわざくれた。

 何があったのかは想像に難くないけれど、めげずにいい商品を世に送り出しましょう。

 この1文を見た時は泣けてしまいそうになった。

「陰ながら応援してる」

 白い歯を見せる阿部くんに笑みを返す。

「また4人で飲みに行こうな」

 そう言われ、別れた。

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