同期は蓋を開けたら溺愛でした

「青木」

 呼ばれ慣れた名前のはずなのに、どうしてか心臓が縮み上がって肩を揺らす。

 エレベーターが到着しても呼び止められた私は当たり前のように取り残され、ドアは閉められてしまった。

 恨めしげに振り返ると大友が近づいてきて、腕をつかみ、歩き出す。

「な、に」

 向かうのはエレベーター裏にある階段。
 普段はあまり使われない重い扉を開け、扉の開閉の邪魔にならない階段の踊り場あたりで解放された。

「何か、あった?」

 いつもこうだ。
 隠してもバレて放っておいてくれない。

 心配している優しい声色に、どうしてか鼻の奥がツンとして抱きつきたい衝動に駆られる。

 おかしいんじゃない。私。
 大友のせいで悩む羽目になったのに。

「様子、変だったから」

 慈しむような視線を向けられて、急に居心地が悪くなる。

 そんな目で見ないで。

 視線から逃れるように顔を背けると、大友の手が伸ばされたのがわかった。
 伸ばした手が私に触れる直前で空をつかんで、そして降ろされた。

 決して無闇に触れない同期の距離。

「いつもの居酒屋」

「え」

「いつもの居酒屋にいて」

 それだけ告げた大友はオフィスの方へ体を向ける。
 歩を進めた大友が振り返って念押しをした。

「絶対だぞ。来なくても俺は待ってるから」
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