同期は蓋を開けたら溺愛でした

「待ってろ。とりあえず一時借りた部屋じゃ落ち着かないから、電話してくる」

 フロントへ繋がる電話を手にして、「菊の間を一時借りている者ですが」と、部屋の名前までスラスラ口にする大友に、まんまと騙されたんだ、と実感して悔しくなった。

「さ、話そうか。それとも話しやすいようになにか飲む?」

 部屋に備え付けられている冷蔵庫を物色している大友へ、私は問いかける。

「去年の社員旅行って、大友が私を酔い覚ましに連れ出して、眠っちゃったからって部屋まで届けてくれたの?」

「ああ。まあ」

 いつもの調子で返事をされて、やっぱり知らなかったのは私だけだったんだと事実の確認を済ませる。

「知らない間に部屋で寝てたから、どうやって部屋に来たのかなって思ってたけど」

「まあ、口止めしたし」

「どうして」

 大友は振り返ると、いつもと変わらない口調で当たり前のように告げる。

「その時は気持ちを言う前だったから、あんまり度を超えて関わってるって恵麻に思われて避けられたら堪らないだろ」

「私にって他の人にはバレてもいいわけ?」

「他のやつにバレたって、別に……」

 そうだよ。大友ってそういうやつだ。

 なんだかおかしくなって笑い出す。

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