同期は蓋を開けたら溺愛でした

 しかし、ここ数日、外で大友と2人で会っていない。

 前から毎日のように外でも会っていたわけではなく、このくらいが普通だった。

 それなのにここ数日の大友は今みたいにあの手、この手で仕事後の約束も取り付けようとする。

『俺はお前を落としに行くから』

 その台詞が浮かんで頭を振る。

「どうした」

 誘う言葉に深い意味なんてなさそうな、人畜無害な強面の顔をして大友は私を見る。

 そしていつもみたいに私の頭に手を置いて乱暴にかき回す。

「いつも通りって言ったろ」

『馬鹿言い合える同期』

 いつも通りの私なら喜び勇んで大友のアパートに行くだろう。
 なんならお泊まりセット持参で。

「考え、なし過ぎない?」

 気持ちを告げられ、会社でも手を繋いでくるような男のアパートに行くなんて。

「今さらだろ」

 元も子もない台詞を言われ、カチンとする。

「そもそも大友のせいでしょ!」

「はいはい。悪うございました」

 意地悪な顔をして、私が繰り出すパンチをひらりとかわす。

 大友に敵う気がしない。一生かけても。

 そんな考えが浮かんで、私は悔し紛れにぶっきらぼうに言い放つ。

「召使いのように働かせてやる」

「こんなご主人様、いてたまるかよ」

 尊大な態度に閉口して、大友を睨みつける。

 エレベーターのドアが開いて、睨み合ったまま一時休戦となった。

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