ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「創手様の本当のお名前はなんですか?」

「名前?」

「はい」

「そんなもの、訊いてどうするの?」

「別にどうもしません」

「君っておかしな子だね」

「すみません」

「別にいいんだよ」

創手は話しが通じない相手ではなさそうだ。

あたしは森に聳える城を何の気なしに脇見した。

ライトアップされたそれは、堂々としていて、シルエットだけで見たら湖に浮かぶ巨大なウェディングケーキのようだ。

創手は水音に紛れるくらい、さらりと言った。

「君、僕と結婚しない?」

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