ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「はい?」速攻で訊き返す。

それはさすがに唐突過ぎる。何故にいきなり求婚なのか。

「あの、それはどうでしょうか。あまりいい考えとは……」

「僕が嫌いなの?」

嫌いとか言う問題ではなく、それ以前にあなたは得体が知れないではないか、とは言えなかった。

うろたえる程動揺しているわけでもなかった。あまりに非現実的に思えたからだ。

「まだ結婚出来るお年頃には見えませんが」

すると彼はまるであたしが発した史上最低のギャグを失笑するみたいな、ひどく冷たい笑い方をした。

「年は関係ない。だって、僕、もう直ぐ89歳だしね」

「はち……」では今彼は88歳。米寿か。

「ず、随分お若く見えますね」

創手は少し吹き出していた。

ああ、この夢世界のスタンダードはどこにあるのか。理解の範疇を超えている。

「君は何故、意識不明に?」
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