ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
この世界がいつ、どうやって出来たのか、アジトのメンバーは誰も知らないという。

気が付いたら自分がいて、創手がいて、この世界があったらしい。

創手が全ての統治者であり、彼の恩恵を享受することで世界が成り立っている。

皆、ナチュラルにそう理解している。

ただし、少しばかり異なっていたのは、全世界の誰もがそのことに何の疑義も質さないのに対し、アジトのメンバーだけはこの世界に違背していたということだ。

赤い物は絶対食べてはならないとか、着てはならないとか、昼間は外出禁止だとかの、幾つもの禁止事項にメンバーは反目した。

こんな馬鹿げた規則に縛られるのが耐えられなかった。

また、周囲の者が当然のようにそれを遵守しているのを見るもの、愚に思えるようになった。

それで周りから徐々に孤立していった。

そうしてあぶれ者が寄り集まり、自然とこのコミュニティーが形作られたそうだ。

リーダーとなって集団を率いたのはヒメだった。

集まってみて、もう一つ共通項があることが分かった。全員、自分の過去の記憶を失っているということだった。

自分が誰であるか、親の名前、出身地、大よそ出生に関する記憶が抜け落ちていた。

それでも微かな記憶の名残か、幾つかのキーワードが前頭葉の片隅に残留していた。

それを出し合い、掻き集め、推理したところ、創手と繋がっているのではという結論に達した。

創手が記憶を搾取している。そう推論した。
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