ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し

大股で草を踏み締めながら、振り子のように行きつ戻りつ歩行する。

「せいっ」と草を蹴ると、モンシロチョウが驚いて、でも焦るでもなくひらひらと飛び立った。

あたしは走った。

「ぎゃー」とか「出来たー」とか「ひゃっはっは」とか奇声を発しながら草原を駆け回った。

でたらめに両手を振り翳し、独楽のようにくるくると踊る。

しばらくすると風景が独りでに回り出した。眩暈すら愛おしく感じてあたしは大声で笑う。

もしここが街中だったら、気違いだと暗黙のうちに了解され、見て見ぬふりをされただろう。

でも、どうせここには誰もいない。

そうしながら頭では考えていた。きっとあたしは死んだのだ、と。ここは天国に違いない。

だってこんなに美しい世界は見たことがない。

神様があたしの願いを聞き届けてくれたんだ。

死ねてハッピーと思っていた。

もう一つの可能性のことも考えた。もしかしたら病室のベッドで夢を見ているだけかもしれない。

それならそれでもいい。ずっと永遠に目覚めないで欲しいと思った。

あの汚れた体には戻りたくない。

決して。もう二度と。


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