ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
舗装された車道には車が行き交い、中折れ帽を頭に載せたぜんまい紳士や、ぜんまい坊やの手を引くぜんまい婦人が、歩道を気忙しく横来する。

紺色に黄色いラインの入った路面電車も通っていた。

街灯に照らされたその街は、ディズニーランドのワールドバザールに似た、小洒落た街並みに見えた。

ルークは正体がばれないようにヘルメットを目深に被り、若干変装していた。

どうやらルークも指名手配されているようだった。

この分ではあの家に住む全員がお尋ね者なのかもしれない。

あたしはルークが用を済ませるのを、サイドカーのサイドの部分に座して待っていた。

下手に歩き回って人目に付かない方がいい。

背中にぜんまいがないと面倒に巻き込まれる。

そう解釈していた。
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