ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
頬杖を突きながら、ぼんやり近くのショーウィンドーを覗く。

そこは書店だった。新刊とか、〈お勧め!〉と書かれたポップの付いた本が並ぶ。

一番広くスペースを割いて平積みされているのは、〈創手の奇跡〉という子供向けの絵本みたいな本だった。

創手が一体どういうものなのか今一つ理解出来ていなかったので、見てみたいなと思った。

しかしここを動き、揉め事になっては厄介だ。

あたしは遠くから気になるその本を見つめ、勝手なイメージを膨らませた。

「きゃーっ! ディランよ! ディラン・キャニングだわ!」

 黄色い歓声に、七割方出来上がりつつあった創手の空想図を撃破され、ついその方向に攻撃的な視線を送る。

劇場らしき建物の前に一台、黒く磨き上げられた車が停車されている。

その周りを取り囲むように人垣が出来ていた。

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