その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
その途端に、繋がれた手に全意識を持っていかれてしまって、口に出そうと思った言葉がすっかり全部飛んでいってしまった。
緩くつかまれているだけだから簡単に振り払うことだってできたのに、なぜか緊張してしまって解けない。
「すみません、ちょっと通ります」
そんな私の状況を知らないであろう広沢くんが、目の前でお弁当を広げかけている家族に爽やかに声をかけて笑いかける。
「あ、どうぞー」
私が恐縮しながらシートの合間をすり抜けていくときは、沢山の不愉快そうな視線を感じたのに……
広沢くんが声をかけた家族は迷惑そうにするどころか、笑顔で通り道を開けてくれた。
「ありがとうございます」
その家族たちに笑顔を返しながら、広沢くんが私の手を引いてすり抜けていく。
広沢くんの見た目の良さと若さに起因しているのか、私は彼に手を引かれるままにあっという間に誠司くんと乃々香のいる場所に辿り着いた。