その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「今日のことも、乃々香に走るのを教えたことも全部打算だったの?」

思わずクスッと笑って意地悪く訊ねてみたら、広沢くんに不貞腐れた顔で睨まれた。


「それは違いますけど」

さっきまで見せていた男っぽい眼差しはどこに消えてしまったのか。

広沢くんの表情のギャップがなんだか可愛い。


「もういいですよ。降りてください。週明けに交通費の精算お願いします」

不貞腐れた声で話しながら、助手席の背もたれから手を離した広沢くんがドアのロックを解除する。

シートベルトを外してドアに手をかけながら振り向くと、運転席で不貞腐れている広沢くんの横顔が見えた。

不機嫌そうに片方の手をハンドルにかけて、ラジオのチャンネルを弄り始めた彼は私のほうを見向きもしない。

だから、だったのかもしれない。

彼が私のほうを正面から見つめていなかったから、つい気が抜けて、滅多にない気まぐれが起きた。



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